グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の人員配置基準をわかりやすく解説
グループホームを運営していて、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。「夜勤は1ユニットに何人いれば足りる?」「計画作成担当者が辞めたらどうなる?」「パートのシフトが変わったら基準を割ってしまうかもしれない……」。認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)の人員配置基準は「地域密着型サービス」として市区町村が指定権者となる独自の仕組みで定められており、特養や老健とは考え方が異なるポイントが多くあります。この記事では、グループホームならではの配置基準と、現場でよく起きる悩みへの向き合い方をまとめました。
グループホームの配置基準が他施設と異なる理由
グループホームの人員配置基準は、**「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号)**に定められています。特養・老健が「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)等に基づくのと異なり、グループホームは地域密着型サービスとして別省令が適用されます。
最も大きな特徴は、配置基準が**「ユニット(共同生活住居)」単位で設定されている点です。グループホームは1ユニット定員5人以上9人以下の少人数の住居単位で運営され、1事業所あたり原則1〜3ユニット**を設けられます。「全入所者に対して何人」という施設全体での計算を行う特養とは異なり、ユニット単位で管理者・計画作成担当者を置く義務があることを理解しておく必要があります。
2026年時点の配置基準を職種別に整理する
2026年時点の基準では、各職種の配置要件は以下のとおりです(「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」第89条等に基づく)。
| 職種 | 配置基準 | 主な資格・経験要件 |
|---|---|---|
| 管理者 | 各ユニットに1名(常勤専従) | 認知症介護実践者研修修了・3年以上の認知症ケア経験 |
| 計画作成担当者 | 各ユニットに1名以上(うち1名以上が介護支援専門員) | 介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格 |
| 介護従業者 | 日中:入居者3人につき1人以上(常勤換算)/夜間:1ユニットに1人以上 | 法令上の資格要件なし |
「日中3:1」の常勤換算はどう計算するか
「入居者3人につき1人以上」の条件は、**常勤換算(FTE)**で判断します。常勤換算とは、正職員(常勤)の人数にパート・非常勤の勤務時間を加味して「常勤何人分に相当するか」を計算する方法です。
計算式:常勤換算数 = 常勤職員数 + 非常勤職員の週勤務時間合計 ÷ 常勤の週所定労働時間(小数点第2位以下切り捨て)
具体的な計算例:2ユニット・入居者18人(各ユニット定員9人)のグループホームの場合
- 必要な常勤換算数:18 ÷ 3 = 6.0人以上
- 現在の職員構成:常勤4人 + 非常勤3人(週25時間・週20時間・週15時間)、週所定労働時間40時間
- 常勤換算:4 +(25 + 20 + 15)÷ 40 = 4 + 1.5 = 5.5人 → 0.5人不足
- 非常勤を1人追加(週20時間)すると:4 +(25 + 20 + 15 + 20)÷ 40 = 4 + 2.0 = 6.0人 → 充足
自施設の入居者数・職員構成を入力して必要人数を確認したい方は、人員配置基準チェッカーをご活用ください。
夜勤体制の原則と「3ユニット特例」
夜間帯は各ユニットにつき夜勤者1名以上が原則です。2ユニット運営なら最低夜勤2名、3ユニット運営なら最低夜勤3名が求められます。
ただし、2021年(令和3年)の介護報酬改定で**「3ユニット夜勤緩和」**が導入されました。次の要件をすべて満たす場合に限り、3ユニットに対して夜勤者2名以上での対応が認められています。
- 事業所に3ユニットあること
- 各ユニットが同一階に隣接していること
- 職員が円滑に状況把握・速やかな対応ができる構造であること
- 夜間の安全対策(マニュアルの策定・訓練の実施)をとっていること
この特例はあくまで例外であり、要件を満たせない場合は原則どおり「1ユニット1人」の義務があります。適用するには指定権者(市区町村)への届け出が必要です。
現場でよくある悩みと向き合い方
計画作成担当者のケアマネが退職したときは?
各ユニットに1人以上の介護支援専門員(ケアマネジャー)が必要ですが、ケアマネ不足は現場の切実な問題です。2021年改定で計画作成担当者の兼務は最大3ユニットまで可能になりましたが、それでも人材確保が難しいケースがあります。
ケアマネが退職・休職した場合は、速やかに指定権者(市区町村)へ届け出る義務があります。やむを得ない一時的な欠員の取り扱いは自治体によって異なりますが、放置すると減算や行政処分につながるリスクがあるため、早期に相談することが重要です。
パートのシフトが変わると基準を割る月が生じる
常勤換算は月平均で算出するため、産休・育休取得やシフトの変動で基準を割る月が生じることがあります。毎月末に翌月のシフトを組んだ時点で常勤換算数を試算し、不足が生じないか確認する習慣が安心につながります。上記の人員配置基準チェッカーを使えば、パートの時間を変えたときの常勤換算数の変化をすぐに確認できます。
管理者が現場に入ることは認められる?
グループホームの管理者は「常勤専従」が基本ですが、管理上支障がない範囲であれば介護職員を兼務することが認められています。ただし、兼務の可否や範囲の解釈は指定権者によって異なります。複数ユニットの管理者を1人で兼務するケースも同様で、個別の状況については事業所所在地の自治体(指定権者)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
よくある疑問・誤解しやすいポイント
グループホームの「3:1」は特養と同じ計算?
よく混同されますが、グループホームの「日中3:1」と特養の「3:1」は計算の文脈が異なります。特養では介護・看護職員の常勤換算数が「入所者数÷3(端数切り上げ)」以上必要ですが、グループホームは「日中に入居者3人につき介護従業者1人以上を確保する」という要件です。ユニットの最大定員が9人であるため、最大ユニット単位で「3人つき1人」=常勤換算3人以上が必要となります。特養のように大人数の施設全体で計算するわけではない点が特徴です。
介護従業者に資格は必要?
介護従業者に特定の資格取得は法令上の必須要件ではありません。ただし、認知症ケアを担う現場として介護職員初任者研修以上の資格取得を支援する事業所が多く、職員のスキルアップが利用者への支援の質に直結します。また、2024年度(令和6年度)以降は業務継続計画(BCP)策定・訓練の義務化など運営基準が強化されており、職員研修体制の整備が求められています。
まとめ
グループホームの人員配置基準について、運営者が押さえておきたいポイントを整理します。
- 配置基準は「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第34号)に基づく地域密着型の独自ルール
- 日中は入居者3人につき常勤換算1人以上の介護従業者が必要(月平均で計算)
- 夜間は原則として各ユニットに1人以上の夜勤者が必要(3ユニット特例は要件・届け出が必要)
- 計画作成担当者はユニットごとに1名以上(うち1名はケアマネ)で、最大3ユニットまで兼務可
- ケアマネ欠員・管理者兼務など判断が難しい場面は、指定権者に早めに相談する
- 介護報酬改定はおおむね3年に一度で、次回改定は2027年度に見込まれているため、公式発表を定期的に確認する
人員配置の正確な把握は、安定した事業運営の土台となります。詳しくは事業所所在地の自治体(指定権者)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
よくある質問
Q. 1ユニットあたりの定員上限は何人ですか?
1ユニット(共同生活住居)の定員は5人以上9人以下と定められています。1事業所で運営できるユニット数は原則1〜3ユニットです。定員を超えた入居は基準違反となるため、定員管理に注意が必要です。
Q. 夜勤は1ユニットに必ず1人ですか?3ユニットの緩和特例を使いたい場合の手続きは?
原則は1ユニットに夜勤者1人以上です。3ユニット運営で各ユニットが同一階に隣接しており、安全体制要件を満たす場合に限り、3ユニットに夜勤2名以上への緩和が認められています(2021年介護報酬改定)。この特例を利用するには指定権者(市区町村)への届け出が必要です。要件の詳細は事業所所在地の自治体にご確認ください。
Q. 計画作成担当者に必要な資格は何ですか?
各ユニットに1名以上を配置する必要があり、そのうち**1名以上は介護支援専門員(ケアマネジャー)**でなければなりません。2021年改定で、ケアマネが複数ユニットを兼務できる上限が最大3ユニットに緩和されています。なお、計画作成担当者がケアマネジャーでない場合も認められますが、ユニット内で少なくとも1名はケアマネジャーの配置が必要です。
Q. 常勤換算の計算で小数点以下はどう扱いますか?
常勤換算数は小数点第2位以下を切り捨てて、小数点第1位まで(例:2.37 → 2.3)で算出します。必要人数(入居者数÷3)と比較する際は、切り捨て後の常勤換算数が基準を満たすかを確認してください。例えば入居者9人なら「9÷3=3.0人以上」が必要です。
Q. グループホームの運営基準は自治体によって異なりますか?
指定地域密着型サービスはその性格上、市区町村が独自の上乗せ基準を定めることができます。省令の最低基準は全国共通ですが、自治体によって夜勤体制の解釈や管理者兼務の取り扱いが異なる場合があります。開設・運営変更の際は必ず事業所所在地の自治体(指定権者)に確認することを強くお勧めします。