「人手が足りないので、一人に複数の役割を兼ねてもらいたい」——介護現場では兼務の可否が日常的な悩みになります。ただし、兼務は「どの職種でも自由にできる」わけではなく、職種や状況によって認められる範囲が決まっています。この記事では、兼務の基本的な考え方と、よくあるケースの可否を、根拠とあわせて整理します。
「専従」と「兼務」の基本
人員配置基準では、職種ごとに「専従」「常勤」などの要件が定められています。「専従」とは、原則として、そのサービスの提供時間帯を通じて当該サービス以外の職務に従事しないことを指します。逆に言えば、専従が求められる時間帯以外や、専従要件がかかっていない部分では、一定の条件のもとで兼務が認められる場合があります。
何が認められるかは、各サービスの基準省令と、その解釈通知で定められています。たとえば特養の配置は「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)第2条が根拠です(厚生労働省・指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準)。
兼務が認められる主なケース
機能訓練指導員
特養では、機能訓練指導員は「当該施設の他の職務に従事することができる」とされており、看護職員などとの兼務が想定されています(省令第39号 第2条)。日常生活やレクリエーション・行事を通じて行う機能訓練については、生活相談員や介護職員が兼務して差し支えないとする取扱いも示されています。
管理者
管理者は、管理上支障がない場合には、同一敷地内の他の事業所の職務や、当該事業所内の他の職務を兼ねることが認められる場合があります。常時その職務だけに従事していなくても差し支えないとされています。
生活相談員
生活相談員のように専従要件がある職種は、原則として他職種との兼務が制限されます。別に専従の生活相談員が配置されているなど、一定の条件を満たす場合に限って兼務が認められる、という整理になります。
兼務時の常勤換算の注意
兼務する場合に見落としやすいのが、常勤換算上の時間の扱いです。ある職種として常勤換算に算入できるのは、その職務に従事した時間に限られます。
たとえば、看護職員が週40時間勤務のうち8時間を機能訓練指導員の業務に充てる場合、看護職員としての勤務時間は週32時間です。看護職員としての常勤換算は 32 ÷ 40 = 0.8人分として数えます。残りの8時間分は機能訓練指導員側の時間です。兼務だからといって、同じ時間を両方の職種で二重に数えることはできません。判断に迷う場合は、詳しくは事業所所在地の自治体(指定権者)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
よくある質問
Q. 「専従」とは具体的に何を意味しますか?
原則として、そのサービスの提供時間帯を通じて、当該サービス以外の職務に従事しないことをいいます。専従が求められる範囲の外であれば、条件付きで兼務できる場合があります。
Q. 機能訓練指導員は看護職員と兼務できますか?
特養では機能訓練指導員は施設の他の職務に従事できるとされており、看護職員等との兼務が想定されています(省令第39号 第2条)。
Q. 兼務した時間は両方の職種で数えてよいですか?
いいえ。常勤換算に算入できるのは実際にその職務に従事した時間だけで、同じ時間を二重に計上することはできません。
Q. 管理者は他の仕事と兼務できますか?
管理上支障がない範囲で、同一敷地内の他の事業所の職務や施設内の他職務との兼務が認められる場合があります。具体的な可否は管轄自治体に確認してください。